コード日進月歩

しんくうの技術的な小話、メモ、つれづれ、など

高梨太郎のひどい伝言ゲームから見る、仲介役のバッドノウハウ

前から書いてみたかった、ということで初めて書きます!SHIROBAKO Advent Calendar 2018 8日目です。

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夢と現実の間をさまよう、クリエイティブなものをつくる人たちのためのアニメSHIROBAKO。このブログの趣旨と併せたいということもあったので、今回(個人的には)屈指のイライラ貯まる回「#05 人のせいにしているようなヤツは辞めちまえ!」の高梨太郎の振る舞いを「チームの仲介役のバッドノウハウ」という形で見ていきたいと思います。

今回とりあげる内容

作画とアニメーターの遠藤亮介と3D監督の下柳雄一郎が高梨太郎の伝達ミスからこじれていき…というのがこの話の始まりである。 この話、ものの見事にディスコミュニケーションする話なんですけど、ここでちょっと高梨太郎がしでかしたことを作中のふるまいと、そこから思ったことを書いていきたいと思います。

事例

伝達役の話の要素の組み換えミス

作中にて

「いやコレ迫力あるよ」と爆発シーンの3Dの技術の高さに唸る監督たち、ただその部分は遠藤が作画を進めていることを告げる高梨、そこで

「手を付けてなかったら止めてくれる?爆発も3Dでいこう」

と発言した監督、この言葉を受けて太郎が伝達したのは

「3Dが作ったやつ見て、監督これでいくって」 「作画なんかよりカッコいいって」

と言葉を遠藤に投げかけて、遠藤が若干不機嫌になるというシーン。

ここから思う問題

事実の伝える順番を組み替えてしまったがために、本来伝えたかったことと違う意図が伝わってしまっている

監督としてはまだ動いていなかったら手を止めてもらって3Dでいきたいという話だったのに、先に3Dでいくことが前提にあるような話になってしまっている。監督の言葉をそのまま伝えればよかったのに、変に内容の順番を組み替えてしまったがゆえにネガティブな気持ちが乗る結果となってしまっている。

この例は極端だが、普通に私生活でも伝えたいことの内容を順番かえちゃったり、伝え間違えることで、反感を買うような流れになることもあるんじゃないかなというアレ。

不要な言葉を載せて感情を煽ってしまう

作中にて

やりとりのすれ違いがおきて、遠藤の逆鱗に触れてしまう太郎。 遠藤は太郎にこう言い放つ。

「2Dアニメの一番の見せ所は作画だろ、3Dじゃない!そう伝えておけ!」

そして太郎はその言葉を受けて

「3Dに見せ場は任せられないって、3Dは2Dのおまけだって言ってました」「遠藤さん3Dを全否定しているんすかねー」

と3D監督の下柳に言ってしまう。

ここから思う問題

言ったままの話とは異なる情報が伝達役によってのせられてしまっている

これも額面通り伝えておけばまだすれ違わなくて済む、という話だったんですが、伝達役が変にネガティブな気持ちを載せてしまっている。一番ひどいのは「作画が見せ場」っていう話だったのに「3Dには任せられない」という意趣の置き換えがおきていて、話を簡潔に伝えようとして、本来の意味が失われてしまっている。

無駄な敵対関係を作る

作中にて

太郎の伝言ゲームがうまくできなかった結果として、監督が3Dを採用したことが際立ち、遠藤がないがしろにされたことにより作画監督を降りてしまう。そしてもとから持っていた3Dに対して敵対心をより際立たせる結果となる。

ここから思う問題

双方のコミュニケーションのつなぎを正しく行わなかったことで、会っていない人同士の心象が悪くなるということが発生している

作品のクオリティあげたいから3Dを採用したいというだけの話だったのに、何故か3Dが持ち上げられて作画がないがしろになったかのようになってしまった。ただ太郎は監督が決めたという事実を押し出して3Dで進めることをうまく遠藤に納得してもらうという動きをしようとしたとも見える。その事実をうまく使えばよかったのに、なぜか裏目に出ることをなる。

なんでこんなことまとめたか

なにげーなく見ていると一番高梨にイライラが募る回なんですけど、なんで高梨はこんなことを引き起こしたんだろうという話でもあるのでそこを見つめ直して、バッドノウハウとして抽出してみたかったというのがありました。

それこそ開発の現場においてはディレクターや企画者が意図を伝え、それを開発リーダーからメンバーに伝達するというような場面があったりするので、そういうときにこういう伝達役の動きが求められてきます。

そんなチームワークを重んじるべき仕事において、どうやって不協和音ができていくのかを端的にわかりやすく出している回なので、反面教師として心に留めておきたいです。

余談

名言で切り出すことも多く、自分も好きなシーンが数多あるSHIROBAKO。今回はそこを使わずに全然違う切り口で書いてみました。

ただ本当のことをいうと、社会人そろそろ10年を迎えるのだけれど未だにジーンと来るシーンが多いので、時間があれば全話見てのシステム開発に生きるダイジェストを自分視点でやりたかったんですがそれはまたの機会に。

この回だと「あたしらの仕事だって厳しいじゃない。厳しさの種類が違うだけだよ」が一番自分としては刺さりました。

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