読んだ本
読むきっかけ
明確にどなたかのツイートかは覚えてないのですが、Twitterなどでオススメされていたのを見たのがきっかけ
本について
この書籍の著者であるアトゥール・ガワンデ氏は外科医かつ公衆衛生学者である。このガワンデ氏は2008年頃に「Safe surgery saves lives checklist」(安全な手術は命を救うチェックリスト)を作り上げたのだが、このチェックリストができあがるまでのエピソードと「チェックリスト」という考え方が汎用的に使えることをまとめた本となっている。
ミスが許されない医療の現場でいかに成功率を上げるかということにおいて、チェックリストが有用であることを様々な角度で語られている。
また、書籍の最後には「チェックリスト作成ためのチェックリスト」があり、普段の生活のチェックリストを作る際にも役立つものとなっている。
読後の感想
チェックリストの本質を見つめ直させる
この書籍ではガワンデ氏が建築業界、航空業界で使われているチェックリストの考え方を取り入れて医療業界に取り入れていくエピソードも紹介されている。その過程を通して「チェックリストが持つ本来の力を発揮するものはどのようなものであるべきなのか」ということもわかる内容となっている。
本質がどのようなもであるか?というのは書籍の最後にある「チェックリスト作成のためのチェックリスト」を見ていただければと思うのだが、この中のチェックリストを開発する際のチェック項目に以下のようなものがある
「各項目は見逃される可能性が高く、必須である」 - アナタはなぜ チェックリストを使わないのか? チェックリスト作成のためのチェックリスト より抜粋
個人的にはこの部分が非常に重要だと感じた。こちらに関しては書籍内で書かれている航空機のチェックリストの事例の話を見ると非常にわかりやすいので、抜粋して紹介する。
単発のセスナ機での飛行中に、エンジンが停止したときのためのチェックリストだ。(中略)このチェックリストには、エンジン再始動の方法が六つの手順に凝縮されている。燃料バルブを開く、予備燃料ポンプのスイッチをいれる、などだ。だが、一つ目の手順が最も興味深い。そこには「飛行機を飛ばせ」とだけ書いてあるのだ。パイロットは、エンジンの再始動や原因の分析に一所懸命になり、最も基本的なことを忘れてしまうことがある。「飛行機を飛ばせ」硬直した思考を溶きほぐし、生存の確率を少しでも上げるためにそう書いてあるのだ。 - アナタはなぜ チェックリストを使わないのか? 第八章 P203-204より抜粋
事故が発生して頭が真っ白になったら普段できていたこともできなくなる、というエピソードはどこでも聞く話ではあるが、それを加味して事故時の対応のチェックリストに盛り込まれている。
チェックリストはマニュアルでも教科書でもない
普段チェックリストを作っているとただの「手順書」となってしまう場合がある、言い換えればマニュアルになってしまう。このことに関して書籍内で「チェックリストはマニュアルでも教科書でもない」と書かれている。
航空機のチェックリストの事例のとおり、良いチェックリストは要点が凝縮されており、それ自体がなにかの手順を説明するものにはなっていない。そうしてしまうと利用者が使いにくくなってしまうし、純粋に手術や航空機の操縦などで細かく書かれた手順をこなすというのは、紙に対してペンでチェックをいれるようなことができないので難しい。
また、マニュアルではないという側面が強く感じられるのは各項目が簡潔に書くべきというところで、マニュアルや教科書は「何もわかっていない」人向けに書かれるものだが、チェックリストは「ちゃんとわかっている人がヌケモレせずやる」というためのものになっている。そのためこの書籍では「プロフェッショナルこそチェックリストを有効活用すべきである」という旨のことがかかれている。こあたりもマニュアルとは異なるというところを表しているなと感じた。
予想外のミスはコミュニケーションで軽減させる。
不確実性が高い事象を取り扱うことが多ければ多いほど、トラブルやミスが起きやすい。それらをカバーするために「チェックリスト作成のためのチェックリスト」には下記のような項目がある。
「チームメンバーのコミュニケーションを向上をさせるような項目を加えること」 - アナタはなぜ チェックリストを使わないのか? チェックリスト作成のためのチェックリスト より抜粋
これは、コミュニケーション不全が多い場所ではミスが起きやすいという話から記載がされている。
著書の中の例だと手術の話がある。手術の実施前に自己紹介や取り組むことに関しての話がされていない状態で挑んだ場合、なにか予想外のトラブルが起きたときに誰にどう頼むべきかもわからず混乱する。ただ少しばかりの自己紹介と簡単な作業の概要に関して手術の前に言葉を交えるだけでトラブルが起きたときに対処しやすい。また事前に喋るタイミングがあれば、不安に思っていることや心配事もお互いに告げやすい。
また、建設現場のエピソードでは以下のように書かれている。
建設を任された専門家たちは個人の能力を過信せず、二種類のチェックリストを使う。単純な手順の間違いを防ぐチェックリストと、話し合いをさせることで予想外の困難も確実にすべて解決させるためのチェックリストだ。 - アナタはなぜ チェックリストを使わないのか? 第三章 P82より抜粋
チェックリストの力を最大限につかう
この書籍を読むと、チェックリストは平時の事前確認や有事のトラブル対応など様々な場面で使うことができることがわかる。また無意味なチェックリストに関して意味のあるものへの変え方も見えてくるので、普段チェックリストに辟易してしまっている人ほど、一読する価値があるような本なのではないかなと思いました。
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